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多様性を否定する出社回帰:今こそ考え直すべき5つの影響とは?

出社回帰と出社強制により仕方なく出社する人々

 昨今、企業経営における人的資本活用の考え方として近年注目されている「多様性(Diversity)」、「公正さ(Equity)」、「包括性(Inclusion)」という考え方から成り立つDEI(Diversity Equity & Inclusion)を重視する企業が増えています。しかし、その一方で、出社回帰を推進する動きもあります。出社回帰は、働き方の多様性を否定し、従業員一人ひとりの事情やニーズを無視する行動です。

 本記事では、DEI(Diversity Equity & Inclusion)を真っ向から否定する出社回帰の問題点と、それがもたらす影響について詳しく解説します。

1. DEIとは何か?

 DEIの基本的な概念を理解するために、多様性(Diversity)、公正さ(Equity)、包括性(Inclusion)の3つの要素を詳しく説明します。

  • 多様性(ダイバーシティ;Diversity):

    • 違いを尊重すること。
    • 性別、人種、年齢、障害の有無など、多様なバックグラウンドを持つ人々が共に働く環境を作ること。
    • 多様な視点や経験が集まることで、より創造的で革新的なアイデアが生まれます。
  • 公正さ(エクイティ(Equity):

    • 違いを踏まえた上で、最適な機会を確保すること。
    • 多様な人々のひとりひとりがより高いパフォーマンスを出せるように、それぞれに合わせた支援を行い、公平な土台づくりをしていくこと。
    • 公正な評価や報酬、キャリアの成長機会を提供し、差別や偏見を排除します。
  • 包括性(インクルージョン;Inclusion):

    • 違いを尊重するだけでなく、取り入れて発揮してもらうこと。
    • すべての従業員が自分の意見やアイデアを自由に表現できる環境を作ること。
    • 全員が組織の一員として受け入れられ、価値を感じることができる文化を醸成します。

2. 出社回帰がもたらす影響

 出社回帰がもたらす5つの影響について説明します。

1. 多様性を否定することで失われるもの

 出社回帰は、働き方の多様性を否定する行動です。例えば、子育て世代や持病を抱える従業員にとって、リモートワークは必要不可欠な選択肢です。出社回帰は、こうした個人の事情を無視し、従業員が仕事と生活のバランスを取るための重要な手段を奪うことになります。多様性を無視して、切り捨ててもいいのでしょうか?

2. 子育て世代の苦悩

 出社回帰が子育て世代にもたらす負担について詳しく見てみましょう。

  • 公私のシームレスさが必要:

    • 乳幼児を抱える保護者にとって、リモートワークは非常に重要です。突然の体調不良や緊急事態にも柔軟に対応できます。
    • リモートワークがあれば、急な子どもの体調不良や予期せぬ出来事にも対応でき、仕事と育児の両立が容易になります。
  • 始業・終業の時刻の制約:

    • 保育園や幼稚園、学童の送り迎えの時間に合わせて働く必要があります。リモートワークがあれば、これらの時間制約にも柔軟に対応できます。
    • 決まった時間に子どもを送り迎えする必要がある保護者にとって、出社義務は大きな負担となります。リモートワークが柔軟な対応を可能にします。

3. 個人の事情

 リモートワークが個人の事情にどれほど重要かを考えてみましょう。

  • 持病:

    • 例えば高度な技術力を持つ従業員でも、心身に事情を抱えている場合、リモートワークは唯一の働き方の選択肢となります。実際に私は、このような方を中心としたチームで成功したプロジェクトを経験しました。
    • 持病を持つ人にとって、リモートワークは必要不可欠です。出社義務は彼らの働き方を制約し、生産性を下げる可能性があります。  - 頻繁な通院が必要な従業員にとっても、リモートワークは非常に便利です。出社となると半日~終日の制約を生み出し、本人にも企業にもデメリットとなります。
  • 通勤ストレス:

    • リモートワークは通勤ストレスを減らし、時間を有効活用できる手段です。電車が遅れる(よくありますよね)、交通機関がストップして迂回する、そもそも本数が少ない、といった無駄や制約から解放されます。
    • 通勤中の事故やトラブルを避けられます。
    • 通勤費用を削減できるため、経済的な負担も軽減されます。
  • 精神的な健康:

    • リモートワークは、精神的な健康を維持するために重要です。ストレスの少ない環境で働けることが、生産性を向上させます。
    • 自宅でのリラックスした環境が、集中力を高めることができます。
    • 職場での騒音(過剰にキーボードを打つ音や大きな話し声など)、臭い(生乾きの臭いや靴下臭など)、無用な雑談(相手都合によるインタラプト)、などから解放され、職務に集中できます。

4. 家族の事情

 リモートワークが家族の事情にどれほど役立つかを見てみましょう。

  • 介護:

    • 介護が必要な家族を持つ従業員にとって、リモートワークは必要不可欠です。家族の介護と仕事を両立させるためには、柔軟な働き方が求められます。
    • 家族の介護が必要な従業員にとって、リモートワークは家庭内の緊急事態にも対応しやすく、安心して働くことができます。
    • 介護施設への送迎や日常のケアに対応できます。
  • 家族との時間:

    • リモートワークにより、家族との時間を大切にできます。家庭のイベントや行事にも参加しやすくなります。
    • 子どもがいる場合、関わる時間が増え、成長を見守る時間を確保できます。
    • 家族とのコミュニケーションが増え、家庭内の絆を強化できます。
  • パートナーのサポート:

    • 共働きの家庭において、リモートワークはパートナーとの役割分担を柔軟に調整するために重要です。
    • 家事や育児の負担をシェアできます。
    • 互いの仕事のスケジュールに合わせて調整が可能です。

5. 企業へのデメリット

 出社回帰は、従業員への負担だけでなく、企業にとっても大きなデメリットをもたらします。

  • 生産性の低下:

    • 多様な働き方を認めないことで、従業員の生産性が落ちる可能性があります。リモートワークを許可することで、従業員はより効率的に働けます。
    • 本来ならば働けるはずの従業員が、出社義務によって働けなくなる場合、企業全体のアウトプットが低下します。
    • リモートワークが可能な環境を整えることで、従業員の集中力とモチベーションを高められます。
  • 優秀な人材の流出:

    • 柔軟な働き方を提供しない企業は、優秀な人材を失うリスクがあります。従業員は、より働きやすい環境を求めて他社に移る可能性があります。
    • リモートワークを提供する企業は、求職者にとって魅力的な選択肢となります。
    • 従業員の定着率が向上し、長期的な人材育成に繋がります。
  • 企業価値の低下:

    • 多様性を認めない企業は、社会的評価が下がり、ブランド価値が低下する可能性があります。現代社会では、企業の社会的責任が重視されており、DEIを無視することは企業イメージに大きなダメージを与えることになります。
    • 多様性を尊重しない企業は、従業員離れが進むだけでなく、顧客や投資家からの信頼も失うことになります。
    • DEIを推進する企業は、社会的に責任ある企業として認知され、ブランド価値を高められます。

結論:DEIを尊重する働き方への進化を

 出社回帰は、DEIの理念を否定し、多様性を尊重しない働き方への逆戻りを意味します。企業は、従業員一人ひとりの事情を理解し、柔軟な働き方を提供することで、より公正で包括的な職場環境を作り上げる必要があります。今こそ、出社回帰を見直し、DEIを重視した未来志向の働き方を取り入れるべきです。

 この記事を読み終えたら、ぜひ職場でのDEIの重要性を再考し、出社回帰の影響について議論してみてください。多様な働き方を尊重することで、より良い職場環境を築いていきましょう。